寝酒の危険性とは?睡眠の質を低下させない晩酌方法

アルコールには、不安を減らしたり、気持ちを落ち着けて眠りに誘ったりする働きがあります。

そのため、世界各地で眠る前にお酒を飲む風習があるようです。

欧米では、寝酒としてリキュールや蒸留酒などアルコール度数が高いものが好まれ、寝酒そのものを意味する「ナイト・キャップ」というカクテルまであります。

世界の中では特に日本で、寝酒が好まれています。

少量のアルコールを飲むと、寝つきが良くなるのは事実です。

アルコールは脳の中で、興奮系の神経伝達物質であるグルタミン酸の働きを抑え、抑制系の神経伝達物質であるギャバの受容体を刺激することで、鎮静や催眠の作用を発揮します。

この効果のために、昔から世界中で寝酒が愛好されてきました。

ところが、アルコールは量が増えると、睡眠の質を悪くしてしまいます。

体重1kgあたり1gほどの中等量のアルコールでは、睡眠前半の深い睡眠が増えますが、後半には浅い睡眠が増え、夜中に目覚めやすくなります。

さらに、多量のアルコールを毎日飲み続けていると、はじめにあった催眠効果が次第に弱まり、アルコールに対する耐性ができてしまいます。

数日後には、飲み始める前よりも睡眠時間が短くなるため、睡眠時間を確保しようとしてお酒の量が増えてしまい、結果としてアルコール依存症になるリスクが高まります。

しばらくお酒を毎日飲んだあと、「これではいけない」と思って急に飲酒を中断すると、一時的に不眠がひどくなります。

このときも正しい不眠治療のために、医療機関を受診すればよいのですが、「時間がない」とか「面倒だ」などと思っていると、再びアルコールに依存した生活に陥ってしまいます。

また、お酒を飲んだ夜は、トイレが近くなって夜中に目覚めてしまう人もいると思います。

ビールをたくさん飲むということは、水分をたくさん摂っているということなので、その水分を出すためにトイレへ行くのは自然なこと。

しかし、水分摂取量以外にもトイレが近くなる理由があります。

通常、眠っている間には、おしっこが作られないようにするためのホルモン(抗利尿ホルモン)が分泌されます。

しかし、アルコールはこのホルモンの働きを邪魔してしまうため、眠っているうちにもだんだんおしっこが溜まります。

睡眠の後半になると、眠り自体がアルコールために浅くなるので、トイレへ行くために目が覚め、睡眠が分断されてしまうのです。

また、アルコールは舌の筋肉を麻痺させるので、仰向けで眠ったときに舌がのどに落ち込みやすくなります。

さらに、鼻の血行が良くなりすぎて、粘膜が腫れて鼻が詰まります。

これらが合わさって、鼻からのどにかけての空気の通り道が狭くなり、イビキをかきやすくなります。

イビキをかいているときは、体に酸素を十分に取り込めないので、睡眠が浅くなり中途覚醒が増え、熟睡感が減ってしまいます。

アルコールには、ストレスを解消して気分をリラックスさせ、親密な人間関係を作るきっかけとなる効果があります。

ですから、飲み方に気をつければ、人生に彩りを加えてくれるはずです。

寝つくときにアルコールの血中濃度がゼロであれば、少なくともアルコールの悪影響は防げます。

そのためには、体重60kgの健康な人の場合、眠る3時間前までに日本酒なら1合、ビールなら中~大ビン1本、ワインならグラス2杯が限度として楽しみましょう。

少なくとも眠るための寝酒はやめて、夕食のときに晩酌としてお酒をたしなむのが良いようです。

また、アルコール分解で負担のかかる肝臓のために、週1~2日はお酒を飲まない休肝日を作っておきましょう。